今の時期になりますと、桜の開花予想が出ます。今年は、例年より早く、静岡では20日には開花するという予報が出ています。桜の開花予想というのは、ソメイヨシノの開花予報で、気象台にあります標準木のソメイヨシノが開花した時が、その地方の桜の開花になるということです。しかし、早咲きで有名な伊豆の河津桜は、2月の下旬には咲いています。今さら桜の開花といっても、早咲きの桜を楽しまれた人もたくさんいらっしゃると思います。でも、日本人にとって桜といえばソメイヨシノ、ということになっているのだと思います。
同じように、茶業界にとってお茶といえば、「やぶ北」をさします。特に静岡では、「やぶ北」のシェアは90%以上を占めていて、まさに「やぶ北」がお茶の代名詞になっています。それだけ「やぶ北」の品質が優れていていて、桜のソメイヨシノと通じるものがあるのだと思います。ソメイヨシノが、開花から満開、そして散ってしまうまでの期間が短いように、「やぶ北」の成長も一気に進んでしまいます。そのため、一番摘み取りたい時期に摘み取りが出来ずに、茶葉が成長しすぎて品質の悪いお茶が出来てしまいます。それを防ぐには、早生品種や晩生品種を植えれば良いのですが、静岡では一向に進んでいません。「やぶ北」を越す品質の品種茶が、開発されていないということもありますが、それ以上に、「やぶ北」以外のお茶はお茶ではない、という純粋主義が静岡の茶業界にあるのかもしれません。変わることを恐れていては、茶業界全体がジリ貧になってしまいます。変化を恐れずに、新しいことへのチャレンジが、静岡茶を発展させていく方法だと思っています。
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